2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

漆黒に染まった銀弾:16

********* 浅草の事件からあっという間に月日は流れてしまい、コナン達は夏休みに入ってしまった。インターネット上でもクラウディオ・カーターの存在は全て消去され、黒澤サクラの惨たらしい事件に関する内容も全て消されていた。ジンの生死を確認することも…

漆黒に染まった銀弾:15

サクラの顔立ちは東洋系のそれだったが、髪はブロンドに近かった。彼女が俯くと絹のようなその髪がさらりと垂れて、ベールを被ったようにその目が霞がかって見えた。彼女はよく胸を抑えてしゃがみこみ、乱れた呼吸を整えることがあり、ジンはその度に顔を覗…

漆黒に染まった銀弾:14

浅草で身元不明の死体が二体見つかった事件は、詳細までは報道されなかった。クラウディオ・カーターが殺されたことを知った小五郎は、一億円がパァになったとやけ酒を飲んでいたが、実際は全く何の手がかりも見つけられなかったのだから、ほっとしているよう…

漆黒に染まった銀弾:13

「兄貴!!兄貴!!ど、どうなっちまってんだこれ…生きてるのか?」 ウォッカの声が響く。小さな公共トイレの中は血生臭く、妙な熱気がこもっている。 困惑と動揺が高じて声を荒げるウォッカはともかく、恐ろしいのは、先程人を殺したばかりで、目の前で可愛い息子…

漆黒に染まった銀弾:12

「おもしろくもねぇ…」 無理やり白昼の人混みへ引っ張り出されたジンとウォッカは、ひどく落胆させられた。ブラックの言う、おもしろいもの、というのは、変装したジャックのことだったのだ。 「だが珍しいだろ?こいつがこんな真っ昼間から表に出てきているな…

漆黒に染まった銀弾:11

「ジョナサン~?しかもおめー、フリーメイソンって…」 その答えに脱力した。ジョナサンなんてあきらかに偽名であるし、しかも所属組織として名前を出したのが、あの有名な秘密結社。胡散臭い…。 ジョナサンと名乗った彼は、コナンに疑われても大して気にして…

漆黒に染まった銀弾:10

蕎麦屋は混雑しており、三人でベルツリータワーを遠目に見物しながら待った。サラリーマン風の男たちが団体でどっと出ていってすぐにコナン達は店内へ招かれ、運良く座敷の席に座ることができた。コナンには蕎麦の良し悪しなどわからないが、阿笠博士とクラ…

漆黒に染まった銀弾:9

「クラウディオさん、ほれ、見てください。あれが有名な雷門ですぞ。せっかくですから写真でもいかがですかな」 土曜日は快晴だった。週末ということもあり観光客で賑わっており、修学旅行らしい学生の団体もちらほら見えた。 クラウディオは今日はショルダー…

漆黒に染まった銀弾:8

まだ寝付いたばかりで、体と同じくらい瞼が重たかった。だが明るい日差しが容赦なく突き刺さる痛みに耐えられず、渋々目を開けたのである。部屋に入ってカーテンなど一度も開けてないはずなので、どこから日差しが入り込みジンの眠りを妨げるのか気になった…

漆黒に染まった銀弾:7

クラウディオは週末しか日本に来れないのだと言うので、浅草見物も週を跨いだ。ただ今回はせっかくの誘いだからと金曜日には日本に到着し、土曜日に会おうという話でまとまった。 コナン、灰原、阿笠博士、ジョディ、沖矢の五人は、金曜日の夜に阿笠邸に集ま…

漆黒に染まった銀弾:6

間接照明でゆらりと照らされた松の絵の屏風が、妙に不気味だった。職業柄暗いところは慣れているし、シャンデリアでぎらぎら輝くレストランよりずっとましではあるが、バーや路肩で軽食を済ませることが多い生活の者にとっては、少し居心地が悪かった。 ウォ…

漆黒に染まった銀弾:5

クラウディオ・カーターがジョディの携帯電話に折り返してきたのは、依頼に来た日からちょうど一週間経った日曜日。ジョディは工藤邸におり、沖矢はもちろん、コナンと灰原もいた。 「Dr.カーター!?」 彼女が慌てて電話をとったので、沖矢がスピーカーに切り替…

漆黒に染まった銀弾:4

その男はジンよりも背が高く、襟元の伸びた黒いセーターと細身の黒いパンツを履いていた。艶のある黒髪はオールバック、赤い珊瑚のピアスを耳にぶら下げ、赤いマニキュアで爪を彩っている。顔立ちは整っているが造りはシンプルだ。整った眉、切れ長の目、筋…

漆黒に染まった銀弾:3

クラウディオ・カーターが息子探しの依頼をしに来た、と伝えると、ジョディは飛んできた。ずいぶん高揚した、しかし何かに焦っているような声に、コナンは思わずにやりと笑った。 「いい情報をもらえそうだぜ、灰原」 隣で聞いていた灰原も、静かに頷く。顔が強…

漆黒に染まった銀弾:2

翌日、放課後。阿笠邸。 「クラウディオ・カーター!!Dr.カーターのことかね?」 コナンがコピーして持ってきたスクラップノートを見ながら、阿笠博士が意気揚々と言ったので、コナンと灰原は少し驚いた。 「阿笠博士、クラウディオさんのこと知ってるのか!?」 「あ…

漆黒に染まった銀弾:1

どこにでもある、日曜日の午後。毛利小五郎は昼間から酒を飲み、競馬新聞を広げてなにやら上機嫌。蘭は園子たちと映画を見に行くと言い、出ていったばかりだ。 特にやることもないので、部屋を簡単に掃除し、小五郎の空けたビール缶を片付けていたのだが、潰…